うたうレーズン入りのコーンフレーク

「レーズン入りのコーンフレーク カーテンを開ければサンシャイン 二人分のコーヒーが沸いた」

/斉藤和義『やわらかな日』(『やわらかな日』収録)

作詞・作曲 斉藤和義

※カテゴリー「うたうたべもの」とは

食べ物の出てくる曲の歌詞・短歌を引用し、その歌や食べ物についてああだこうだ書いているカテゴリーです

 

『やわらかな日』歌詞全文はこちら(Uta-Net)

 

学生の頃、担任の女の先生が本の好きな人で、朝礼の時に毎日一冊本を紹介してくれていた。

私はその頃あまり読書をしておらず、毎回さして興味もなく、『山田詠美って人の本の登場率が高いな』くらいのことしか思わずただただ聞いていた。

その先生がある日、本ではなく、「今朝ラジオから流れてきた」というこの曲を紹介してくれた。この曲は夫婦の朝の光景を歌ったもので、奥さんが旦那さんに『事故で亡くした夫の体から取り出した精子で受精成功』というニュースを「凄い愛だと思わない?」と問いかける。旦那さんは色々考えながら「うんそうだね」とだけ答える。先生は、そのくだりの歌詞を朗読して「とってもおもしろい歌だと思って気になりました」といつもの淡々とした口調で言った。私もこの曲は知っていて、このくだりのインパクトと、とても幸せそうな夫婦の光景が凄く印象に残っていたので、先生がこの曲の事を話してくれたのはなんだか嬉しかった。

 

それからしばらくして、先生の名字が変わった。ここ最近、いつも凛としている先生がとても辛そうに、時に涙を見せたりしていたのはそういうことだったのか、と納得した。子どもが欲しかった、と離婚の理由を話す先生が涙ぐんでいた記憶もあるが、いつも通り凛としていた記憶もある。

 

その頃の私はそれを聞いて特に心を痛めることはなかった。別に担任のプライベートに興味はなかったし、「旦那さんは子どもが嫌いだったのかな」とか「先生でもこういうことがあれば泣くんだな」くらいにしか思わなかった。

 

あの頃の先生の歳に近づいた今、この曲を聴く度に、先生がどんな思いでこの曲を私たちに紹介していたのか考えてしまい少し苦しい。あの頃の私は結婚したらいつでも愛する人と朝食にレーズン入りのコーンフレークを食べられると思っていた。でも実際はレーズンが嫌いな人もいるし、朝はコーンフレークなんか食えない和食だ、という人もいるし、朝食なんて食べない人もいるのだと大人になってから知った。「子どもが欲しいから」という理由には、あの頃の私が考え得なかった、凛とした先生を泣かせてしまう様々なしがらみがあった可能性を大人になってから知った。

 

数年前、あの頃の同級生の結婚式で、先生が再婚し、子どもを産んだと聞いた。担任のプライベートに興味のなかった私は、本当に嬉しかった。

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